唐澤貴洋弁護士が教える「そのツイート炎上します!」はあちゅう、スマイリーキクチ対談も掲載 #書評

唐澤貴洋弁護士が教える「そのツイート炎上します!」はあちゅう、スマイリーキクチ対談も掲載 #書評

Clock Icon2019.06.24

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SNSなんかをやっていると何が起こるかわかりません。トラブルが鬼拡散されている様子をタイムラインで追いながら明日は我が身ってのも過言ではないと思っていたときに「そのツイート炎上します! 100万回の殺害予告を受けた弁護士が教える危機管理」という本が出ていたので手にしました。

炎上被害者の弁護士による…最新事例集?

本人にとってはあまり好ましいことではないのですが、ネットを見ながら「唐澤貴洋」という名前を知らずにいられた人はほとんどいないのではないでしょうか。2ちゃんねる上のトラブル対応をきっかけに集中攻撃を受けるだけでなく、ご本人の名前や似顔絵が動画サイトなどでインターネット・ミーム(拡散されまくったネタ)化してしまった唐澤弁護士。本書は「100万回の殺害予告を受けた弁護士」という不名誉なコピーが付いた彼の2作目となる単行本です。

ネット炎上の当事者である弁護士の危機管理本、ということでさっそく読み進めたのですが、まず登場したのはアイドル・YouTuberなどによるSNSトラブルやバイトテロなど、世間で起こった事例がひたすら客観的に紹介されていきます。当事者目線、弁護士の知見はと思ったのですが、目次を見ると第1章は「炎上百景」なる事例集からスタートしていたのでした。

  • 第1章:炎上百景
  • 第2章:なぜ炎上するのか
  • 第3章:まずは炎上しないために
  • 第4章:炎上してしまったらどうすればいい
  • 第5章:炎上で被害を受けた、さあどう戦う

そして各章の間には別途唐澤弁護士のコラムやスマイリーキクチ氏、はあちゅう氏、ジャーナリスト渋井哲也氏との対談がそれぞれ掲載されています。

被害者目線の一冊

第2章「なぜ炎上するのか」ではスマホやSNSの台頭によって炎上が起こりやすくなったという環境の変化、ネットのトラブルに通底する感情の動きや性質、情報の広がりかたなどが解説され、その一例的な立ち位置でスマイリーキクチ氏との対談が掲載されています。

そして第3章「まずは炎上しないために」からは実践編とも言える内容に。唐澤弁護士は前章で説明した炎上の背景を取り上げながら、炎上を未然に防ぐためのメンタリティを以下のようにアドバイスしています。

  1. 表現に気をつける、想像力をもって投稿することを心がける
  2. なぜそう思ったのか理由を書く
  3. 誰が受け取るかを意識する
  4. 投稿するまでに間を空ける
  5. 実際に周りの人に見せてみる

永らくインターネットカルチャーに身を置いている人ならば「ほんそれ」と思わずにいられない項目ばかり。いやはや本当に気をつけたいところです。そしてこの章のコラムでははあちゅう氏との対談が掲載されており、彼女がこれまでにどんな炎上被害を受けてきたのか、またその攻撃を仕掛けてきる人の属性や対策方法について持論が展開されています。

著者やゲストによる炎上の様子は、多くの人にとってなかなかに想像しがたい世界です。その意味でこの“被害者の立場”による一冊は貴重な証言集と言えるでしょう。

起きてしまった炎上に対して

3章のあとは起きてしまった場合の話です。

第4章「炎上してしまったらどうすればいい?」については、延焼させないためのさまざまな心がまえと行動例が紹介されています。私は実務上「もし炎上が起こってしまった際に企業はどう広報すればよいか」ということにも関心を持ちがちですが、「誠意ある対応を心がけることが不手際・不始末のあとでもそれ以上に企業価値を損なわない最良の方法(同著内151ページより引用)」という記載を見つけて「せやな」と言わずにはいられませんでした。

最終章は「どう戦う」という勇ましいものに。そこには10ページながら「どこに対して何をすればよいか」が書いてありました。Cloudflareや公衆回線が使用されていたときの難しさなども触れられていますが、現在どんな手順の踏み方があるのか、というのが体系的に書かれています。最後はネットいじめやオンラインコミュニティに造形の深い渋井哲也氏との対談と、「すべては被害者を出さないために」という唐澤弁護士の所信表明的なあとがきで終わりです。

内容としてはもう少し法的な話や対策の詳細などが書かれていたら、という欲が出てしまうものでしたが、本書を通して見える当事者ならではのコメントには重みを感じました。あと余談ですがイラストレーター・師岡とおるによる唐澤弁護士の絵が似ているのもよかったです。

変な言い方ですが、本書は炎上に関するエントリー向けの一冊でした。ただ、冒頭にも書いたとおり、いつ誰がそうなってもおかしくないものです。ネットニュースサイト・J-castニュースが今年の元日に「炎上の平成史」と題して過去の炎上件数やその論考を発表していましたが、今やほぼ3日に1回はどこかしらで“炎上事件”が起き、小さなものであればその数はもっと……という時代です。万全な姿勢(?)でネットをやるためにも手にとってみるのもよいかもしれません。

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